
京都精華大学ギャラリーTerra-Sにおいて、京都精華大学主催による企画展「スケッチーズ|八瀬の石黒さん家から見た世界」を開催します。
陶芸家?石黒宗麿は、1936年に京都市左京区八瀬の地に窯を築き、晩年までこの地を拠点に作陶を続けました。1955年に鉄釉陶器の技法による重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されるなど、中国や朝鮮の古陶磁に迫る研究を行いながら、独自のエスプリを持つ個人作家として広く知られています。1956年には「財団法人八瀬陶窯」を設立し、没後(1968年)も八瀬陶窯は関係者による管理を経て、2003年から本学が施設管理を引き継いでいます。さらに2018年には、京都精華大学伝統産業イノベーションセンターにて「八瀬陶窯プロジェクト」を発足し、2023年には工房のある家屋を修繕し、石黒宗麿の研究拠点として本格的に運用を開始しました。

本展覧会では、「陶芸」「建築」「庭景」「集古」「玩具」のテーマごとに作家や研究者、専?家でチームを構成しました。作家らは石黒が残したスケッチをもとに地域の風景や風習、創作の意図を想像しながら読み解き、自らも八瀬に通いました。会場ではその成果の作品を石黒のスケッチとともに展示し、八瀬の石黒さん家から見える多角的な世界を展覧します。
石黒宗麿は、八瀬陶窯が後進の陶芸家たちの研究の場となることを望んでいました。本展はその遺志を引き継ぎ、表現や研究活動の場として新たな文化の創造をめざすものです。多様な専門分野が交わることで生まれる文化の広がりや、新たな視点を発見する機会となることを願っております。
展覧会テキスト

陶芸家 石黒宗麿の家は、八瀬の端っこにある。石黒さんは、よく縁側に腰を下ろし、庭を見ながら思索に耽っていたという。ここからどんな景色を見ていたのだろう。正面には比叡山の山並み、庭では妻のとうさんが菜園をし、犬たちが駆け回っている。季節ごとに梅や桜、柿、椿が色づき、鳥たちがさえずる。麓の街道に目を向けると、大八車を引く人々や柴を担いだ女性たちが行き交う。
石黒さんのスケッチブックには、そんな八瀬の景色が何枚も描かれている。けれど、その膨大なスケッチを見ていると、八瀬という土地の風土や風習を描きながらも、ここではないどこかの景色を描いているようにも思えてくる。というのも、スケッチの多くは景色を写生したものではなく、皿や壺に合わせた図案へと展開されているからだ。石黒さんは、山あいの八瀬での暮らしを描き留めることで、どこでもない世界を描き出そうとしたのかもしれない。
とはいえ、残されたスケッチを眺めているだけでは、どうして石黒さんがそれらの景色を描いたのかが分からない。そこで、学内外の作家や研究者に声を掛け、石黒さんが暮らした「八瀬陶窯」でしばらく時間を過ごすことにした。家屋や庭の掃除をしたり、縁側に座って地元の方から話を聞いていると、ふいにそのスケッチが描かれた背景が見えてくる。そうやって石黒さんとの対話を重ねていると、いま、ここから見える世界を描いてみたくなってきた。本展では、石黒さんのスケッチをはじめ、陶芸?建築?庭景?集古?玩具という5つのチームが描き出したスケッチたちをお見せしていく。
(中村裕太(美術家 / 本学芸術学部 教員))
(中村裕太(美術家 / 本学芸術学部 教員))
ギャラリーTerra-S 前期企画展「スケッチーズ|八瀬の石黒さん家から見た世界」
会期:2025年6月27日(金)?8月3日(日)
休場日 日曜日(ただし、8/3は開場)
休場日 日曜日(ただし、8/3は開場)
時間:11:00-18:00
会場:京都精華大学ギャラリーTerra-S
〒600-8411 京都市左京区岩倉木野町137 京都精華大学 明窓館3F
〒600-8411 京都市左京区岩倉木野町137 京都精華大学 明窓館3F
料金:入場無料
主催:京都精華大学
助成:公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
協力:射水市新湊博物館、京都市左京区役所八瀬出張所、日本玩具博物館、路上観察学会40周年記念事業「路上観察よ いつまでも」
企画:京都精華大学伝統産業イノベーションセンター、京都精華大学ギャラリーTerra-S
マンガ:谷本 研
テキスト:中村裕太(美術家 / 本学芸術学部 教員)
デザイン:仲村健太郎(Studio Kentaro Nakamura)
公式Webサイト:京都精華大学ギャラリーTerra-S
ギャラリーTerra-S前期企画展「スケッチーズ|八瀬の石黒さん家から見た世界」
ギャラリーTerra-S前期企画展「スケッチーズ|八瀬の石黒さん家から見た世界」
参加アーティスト
陶芸チーム
木村 隆(釉薬研究)、田中大輝(陶芸家)、中村裕太(美術家 / 本学芸術学部 教員)
木村 隆(釉薬研究)、田中大輝(陶芸家)、中村裕太(美術家 / 本学芸術学部 教員)
建築チーム
惠谷浩子(風景学)、諏佐遙也(模型製作)、本橋 仁(建築史家)
惠谷浩子(風景学)、諏佐遙也(模型製作)、本橋 仁(建築史家)
庭景チーム
石川知海(御庭植治)、山本麻紀子(アーティスト)
石川知海(御庭植治)、山本麻紀子(アーティスト)
集古チーム
菊地 暁(民俗学)、松元 悠(版画家?美術家 / 本学芸術学部版画専攻 助手)、麥生田兵吾(写真家)
菊地 暁(民俗学)、松元 悠(版画家?美術家 / 本学芸術学部版画専攻 助手)、麥生田兵吾(写真家)
玩具チーム
尾崎織女(日本玩具博物館学芸員)、軸原ヨウスケ(デザイナー?玩具工芸社)、長友真昭(玩具作家?玩具工芸社)、山名伸生(玩具蒐集家 / 本学人文学部 教員)
尾崎織女(日本玩具博物館学芸員)、軸原ヨウスケ(デザイナー?玩具工芸社)、長友真昭(玩具作家?玩具工芸社)、山名伸生(玩具蒐集家 / 本学人文学部 教員)
関連イベント | |
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7月5日(金) オープニングトーク (申込不要) |
オープニングトーク 日時:2025年6月27日(金)18:30–19:30 会場:京都精華大学 明窓館3F ギャラリーTerra-S |
7月11日(金) トークイベント (申込不要) |
トークイベント ひとびとが日々の暮らしの中から作り上げた民具?民藝?郷土玩具といったモノをめぐって、アートとガクモンのアプローチには、どのような違いがあり、どのような分担や協力が可能なのか? 軸原ヨウスケと中村裕太によるリサーチプロジェクト『アウト?オブ?民藝』から今回の「スケッチーズ」に至る経緯を紹介し、アートとガクモンの理想的距離感を考えます。 日時:2025年7月11日(金)19:00–(18:30開場) 会場:明窓館4Fギャラリー 登壇者:軸原ヨウスケ+中村裕太 コメンテーター:角南聡一郎(神奈川大学) 司会:菊地 暁 定員:60名 共同主催:京都民俗学会 |
7月12日(土) トーク&ワークショップ (要事前申込) |
トーク&ワークショップ 「手仕事の学校1|八瀬の民俗?民家?風景?路上観察」 民家や風景、路上から八瀬をみつめるトーク&ワークショップ。民家にみる習慣とものづくり文化や、景観にみる地域の風土についてお話します。 またゲストに林 丈二氏をお迎えし、一緒に八瀬を歩くことで、路上に隠れたものの面白さを探っていきます。 日時:7月12日(土)13:00-17:00 会場:八瀬陶窯 定員:20名(先着順) 申込:ギャラリーTerra-SのWebサイトから、フォームにてお申し込みください プログラム: ?トーク1「八瀬の民俗と民家(今和次郎、西山夘三、路上観察、瀝青会)」 登壇者:菊地 暁 所要時間:1時間 ?トーク2「八瀬陶窯と八瀬の景観」 登壇者:惠谷浩子 所要時間:1時間 ?ワークショップ「八瀬の路上観察」 講師:林 丈二(路上観察学会、イラストレーター、エッセイスト) 所要時間:2時間 (ファシリテーター:本橋 仁) |
7月13日(日) トーク&ワークショップ (要事前申込) |
トーク&ワークショップ「手仕事の学校2|八瀬陶窯の庭?玩具のデザイン」 トーク1では、八瀬陶窯の庭の植生を観察し、庭に向けられた石黒さんのまなざしを探ります。トーク2では、かつて八瀬周辺で作られていた麦藁人形や、土人形の源流である伏見人形のデザインについてお話します。ワークショップでは、麦藁と和紙を用いて八瀬の麦藁人形を作ります。 日時:2025年7月13日(日)13:00-17:00 会場:八瀬陶窯 定員:20名(先着順) 申込:ギャラリーTerra-SのWebサイトから、フォームにてお申し込みください プログラム: ?トーク1「石黒さんのスケッチと庭」 登壇者:山本麻紀子+石川知海 所要時間:1時間 ?トーク2「玩具工芸とデザイン(八瀬の麦藁人形?伏見人形)」 登壇者:軸原ヨウスケ+長友真昭 所要時間:1時間 ?ワークショップ「八瀬の麦藁人形を作る」 講師:尾崎織女 所要時間:2時間 (ファシリテーター:米原有二(本学人文学部 教員/伝統産業イノベーションセンター長)) |
7月26日(土) ギャラリートーク (申込不要) |
ギャラリートーク 日時:2025年7月26日(土)14:00–14:30 会場:京都精華大学 明窓館3F ギャラリーTerra-S |
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